涙で共感力を高めよう!

泣くことでストレス解消になるという涙活(るいかつ)という活動があります。

そんな涙活で、共感力や自己肯定感を高める授業を学校で展開しているという、なみだ先生こと、感涙療法士の吉田英史さんが実施している話題の涙活イベントに潜入してみました。

今回の実施場所は、小金井市にある東京学芸大学こども未来研究所Codolabo studio。
教員志望の学芸大学の大学院生や公立小学校の現役の先生に向けて、
学校現場における涙活の活用方法のお話だけでなく、
実際に涙活がどういうものかの体験をしてもらいました。

まずは、みなさんに実際に泣き体験を。
泣かす手段は、映像、朗読、絵本の読み聞かせ等いろいろ。
今回は映像を使用。
約30分、複数の短い感動映像が立て続けに流れます。
流す映像は、父と娘や母と息子の関係を描く家族ものが次々に。
10分ほどたつと、会場のあちこちから鼻をすする音が…。

涙活を経験してもらったあとは、
吉田先生から、学校でどのようなことをやっているかの話をされます。
涙にはこんなにも用途があるのかと聞いている皆さんは、
神妙な面持ちで聞いています。

・そもそも涙活とは
涙活とは、2,3分だけでも能動的に涙を流すことでストレスを発散してもらう活動。 涙を流すことによって、緊張やストレスに関係する交感神経から、 脳がリラックスした状態の副交感神経へとスイッチが切り替わり、たくさん涙を流すほど、ストレスが解消し、心の混乱や怒り、 敵意も改善する事が研究で分かっているんだそうです。

ただし、どんな涙でもいいわけではありません。目の渇きを防ぐためにでる涙や、目にゴミが入ったときに出る涙は いくら流しても意味がありません。ストレス解消に効果があるのは、喜怒哀楽で流す“情動の涙”。

吉田先生は、全国の学校や企業をまわって、ストレスマネジメントの一つとして、この涙活という方法を 広めています。

 ・学校での涙活 

学校では、業務に追われてストレスをためている教員や、育児で疲れている保護者に向けて、涙活イベントを実施するだけでなく、児童に向けても行っています。

吉田先生は独自に共感力を高めるプログラムというものを作っているのだという。人が涙を流す時に、脳の内側前頭前野が震えて、目から涙が出るそうなのですが、この内側前頭前野は別名、共感脳と言われているそうです。人が何かに共感したり、感動したりするときに、この部位が震え、落涙するそうで、吉田先生は、この共感脳を震わすために数々の涙を使ったワークショップを児童に向けて実施しています。

・感動映像の鑑賞と語り合い

生徒に2,3分から7,8分の感動映像を複数みてもい、その後、みなさんで、その感想を共有する時間を設けています。流される映像が、家族の問題について考えさせられるものから、スポーツで頑張る姿等をうつしているものまでさまざま。その後、みなさんでそれについて感じたことをグループになって話し合ってもらいます。

吉田先生が言うには、泣く場面に、その人の価値観が出てくるのだそうで、生徒の中には、なぜ泣いたかの話をするに際し、思わず、現在の人間関係で悩んでいる話や、親とうまくいっていない話などする人も出てくるのだそう。その話を周りの人とシェアすることで、ブリーフケアにもなり、その結果、クラスの一体感が醸成され、今まであまり仲が良くなった生徒でも、これをきっかけに仲が良くなったという報告をもらうそうです。

・泣ける話の創作

なみだ作文という泣ける感動的な話を生徒に作ってもらい、発表してもらいます。形式は自由。「お母さんへ」というタイトルで手紙風に書く人が多く、内容も、「親に反抗しているけれども本当は感謝しています」と書く人が多いんだとか。ほとんどの生徒が泣きながら発表し、それを聞いている他の生徒も涙を。もらい涙、誘い涙という言葉がありますが、クラス全員が涙に包まれるのだそうです。

・イベント参加者の声

現職の公立小学校の先生、浜元徹美さんの感想をご紹介します。

学校現場で喜びを共有するのは、どの先生も目指していると思いますが、涙を共有すると、共同体意識が高まるような気がしました。涙を共有することでクラスの中でも自分らしさを出しやすく、また、他者の違い多様性を共有することができ、とてもよいと思いました。
道徳の授業でも価値項目を合わせれば、涙の授業は実践できるし、より人それぞれの個性を活かした道徳の授業を展開できそうな気がします。
小学校で涙の授業が実践できるのかどうか考えたとき、涙を人に見せることを良しとしない環境もあります。泣いてる子を見て茶化したり、クールな感じを装ってみたり、発達段階もそれぞれで、感じ方も多種多様。そんな中で実践するのは未知数ではありますね。
ただ、涙の共有、ある意味、哀を共有できるクラスは、より良い方向に進むイメージはできます。共感性や多様性、思いやり、違いを受け入れる力、何よりクラスとしての共同体に愛着が増すような気がしますね。
今まで、楽しさや喜び、苦しみなどは、それなりに共有してきたように思いますが、哀を共有する場面は少ないように思います。新しいアプローチができ、さらなる成長の予感がしました。ただ、どのように小学校現場で実践すれば良いのかまだ、考えつきません。
涙活を授業ができるクラスに育ててからやるのか。涙活を通してそのようなクラスに育てるのか。理想は後者ですが、どちらも難しいところですね。
ビジョンはより良いものにイメージできますが、より良いプロセスがイメージできません。挑戦して試行錯誤してみようと思いました。

・涙の授業の可能性

いじめ、校内暴力、学級崩壊等、学校の問題は山積しています。その背景に児童の共感力の低下がその一因としてあるのは否定できないでしょう。涙活がその特効薬になるのか。これから真価が問われていくのでしょう。